【介護過程・アセスメント】入門編

福祉人材養成校で10数年講師をしています。
その仕事において「アセスメントが難しい…」「何をすればいいのか分からない」
という相談を受けることが多くあります。

勉強中の方に限らず、現場で悩んでいる方も多いかもしれません。

この記事では勉強や日常の業務がよりスムーズになるように、「アセスメントとは何をするのか」「適切に行うために必要なこと」について解説します。

アセスメントとは

辞書には
「客観的に調査し評価すること」
テキスト等には
「情報収集と分析」「事前評価」などと表現されています。

この説明で、なるほど!と思える人は少ないのではないでしょうか?
ではアセスメントについて、もう少し整理してみましょう。

アセスメントとはなにをすることなのか?

アセスメントについて勉強していると、様々な説明を見聞きしますが
まずはかんたんに、「ニーズを明確にする」でよいと思います。
これではぼんやりしすぎという方に、もう少し砕いて言うと

・「対象者が望む生活を理解する」
・「望む生活の実現のために、必要なことを明確化する」

( ” 対象者ニーズ ”と” 支援者ニーズ ”を整理整頓し、まとめる )
これらをすることです。

「困りごと」「出来ない事」「支援すること」
このような視点での情報収集では、望む生活が見えてきません。

しば
しば

対象者ニーズ(利用者ニーズ)と支援者ニーズとは何なのか気になりますね。
ニーズにはいろいろあります。
気になる方は” ニーズの種類 ” について調べてみて下さい。

\\\ 「ニーズについてもっと理解したい!」という方は『職務の理解』をご覧下さい ! ///

【職務の理解 ポイント】介護の"正解"とは?
「正解がない」と言われる介護の仕事や勉強をしている方へ向け、介護職の「職務の理解」について解説します。

また、アセスメントとは「情報収集と分析」とされていますが、
収集すべき情報とはどのような内容でしょうか?

これについては、厚生労働省が以下の23項目を示しています
・基本情報に関する項目 9項目
・課題分析(アセスメント)に関する項目 14項目

しば
しば

23項目の内容が知りたい方は
“ アセスメント 23項目」”で検索してみて下さい。

この23項目を網羅していれば、書式は問わないとされています。
また、アセスメントを助ける道具もあり『ケアマネジメント実践記録方式』、『日本介護福祉会方式』など、様々なアセスメントツールが存在しています。

様々ある理由は、
ケアマネ・介護職・医療職・施設系・在宅系など、その立場や役割、サービス種別の違いなどにより重視する情報が異なるためです。

しば
しば

気になる方は
⇒ “ アセスメントツール ” で調べてみてください。

アセスメントに必要なこと(能力)は?

以下の3つにまとめました。

必要なこと(能力)
  1. 「客観的に評価する」
  2. 「コミュニケーション能力」
  3. 「自身の役割(職務)の理解」

「客観的に評価する」

自身の価値観や思い込みなどは入れずに、得た情報を分析すること。

例えば、
「お風呂に入るのは1週間に2回」
このような情報を得たとします。

この情報だけで
「週2回しか入浴していない」
「入浴頻度を増やして清潔保持が必要である」
などと評価するのは客観的ではなく、主観的な評価です。

対象者にとって週2回の入浴は少ないのか?
週2回では不潔であるという根拠はあるのか?
入浴が週2回という情報自体が事実であるのか?など明らかにすべきことがたくさんです。

アセスメントは実施者によって、ばらつきがあってはいけないとされてます。
厚労省の課題分析標準項目の提示は、それを防ぐためでもあります。

「コミュニケーション能力」

とても重要な能力です。

コミュニケーションが苦手と言う方の中には、
「口下手で言葉が出てこない」
「人見知り」などを理由に挙げる方も多くおられます。

私生活の中では苦手・下手でも構いません。
それぞれの性格、個性です。

しかし対人援助職において、この能力は重要です。
下手のまま仕事をする状態とは、他の職種で例えるなら
・音痴の歌手
・不運続きの占い師
・万引きするGメン
・ちっちゃいジャイアントロボ・・・ このくらいにして 

コミュニケーション能力とは技術であるため、向上のためには努力を要します。
この記事を書いている私自身、人が苦手で人を避けて生きてきました。
ですが、仕事においては”得意”と言い張っています。

「人が苦手なのに得意とはどういうことか?」と不思議に思われるかもしれませんが、そう言えるは「対人援助職におけるコミュニケーション技術」を勉強したからです。

気になる方は別記事「コミュニケーション技術について」をご覧ください。

【コミュニケーション技術】を理解して上手になる!
介護における「コミュニケーション技術」を解説! 上手になる方法やポイントをまとめて紹介します!

「自身の役割(職務)の理解」

前述の「客観的に評価する」と重なりますが、「~したほうがよい」「~すべき」など、支援者ニーズを押し付けるような場面を頻繁に見受けます。
介護職は指導者や教育者、保護者や友達ではありません。

その助言・提案は利用者ニーズにを反映したものか?
誰のための支援なのか?本人の望みはなにか?
それを知ろうとせず行う支援は、支援ではなく自己満足でしょう。

また、公的な給付によって行われる支援である事も意識すべきです。
「言われるがままの支援」= 職務の理解不足です。
このような支援をしている人は、「公的給付の財源」を理解しましょう。

「公的給付の財源」 =税金と保険料(介護保険の場合)、利用者の自己負担(1~3割)
 ※財源やその割合はサービスの種類によって異なります。

なんだかむずかしいと感じる方は、まずは以下の3つを意識してください。
本人が希望しても、”健康状態の悪化”や”自立を妨げる”内容の支援はできない
認められない内容の支援がある
公的サービス以外にもニーズを満たす手段がある(社会資源の活用)

「やっぱりむずかしい」「こたえが欲しい」という方は↓の記事をご覧ください。

【職務の理解 ポイント】介護の"正解"とは?
「正解がない」と言われる介護の仕事や勉強をしている方へ向け、介護職の「職務の理解」について解説します。
【職務の理解 おまけ①】 自立支援「“気が利く”は良い支援者ではない」
介護過程・職務の理解の補足記事です。気が利くヘルパーの問題点について解説します。

まとめ

アセスメントは特定のタイミングで行うように捉えられがちですが、”常に行う”が基本です。

日々の業務でアセスメントを意識することが重要です。


この記事ではアセスメントのすべてを書いた訳ではありませんが、それでもアセスメント実施には様々な知識・能力が必要であることが分かります。

余談ですが、
アセスメントや自身の役割について理解不足の方は、支援場面での記録が下手であることが多いです。「お変わりありません」、「安定しています」が多い支援者は要注意でしょう。
記録物が多くある介護の仕事で、記録下手では苦労します。
勉強中の方は関係ないと思われるかもしれまませんが、介護実習の記録に勉強の理解度が表れます。

これらの理解を深めることは、資格取得や日々の業務のスムーズさに繋がっているようです。

アセスメント・コミュニケーション 【補足分】
【アセスメント・コミュニケーション】Q&Aと解説の記事です!