【職務の理解 おまけ①】 自立支援「“気が利く”は良い支援者ではない」

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介護職に従事しながら、福祉人材養成校の講師をしています。

仕事のなかでよくお受けする質問や相談、悩みごとなどの回答を記事にしています。

「あのヘルパーさんはよく気が利く」
「なにも言わなくも○○してくれる」

このようなお話を耳にすることがあります。

さて、気が利く人は良い支援者なのか?

結論

気が利く支援者は、良い支援者ではない。

「気が利く」と評価される支援者は、介護過程や職務の理解不足であることが多いです。

今回はこの「気が利く支援者」について考えてみます。

この記事は別記事「職務の理解」の補足記事ですので、未読の方はそちらもご覧ください。

【職務の理解 ポイント】介護の"正解"とは?
「正解がない」と言われる介護の仕事や勉強をしている方へ向け、介護職の「職務の理解」について解説します。

「おまけその2」の記事もできました。気になる方はご覧ください。

【職務の理解 おまけ②】(外出支援編)支援者は“黒子”
過去の記事で『自立支援の考え方のおまけ』として、「気が利く支援者」について紹介しました。 自身の役割について理解不足の支...

気が利くとは?

辞書には以下のような説明がされています。

【気が利く】

① 物事をするのに、細かなところまでよく気がつく、心が行きとどく、気転がきく。
② しゃれている。

しば
しば

「気が利く」は、良いことであるという説明がされているようです。

日常場面でも「気が利く」は、褒め言葉として使われる事が多い印象を受けますね。

気が利くということ自体に問題はなく、その後の行動によって問題が起こるようです。
次の項目で確認してみましょう。

気が利く人の問題点

気が利くと言われる人の中には、「困っているようだから助けてあげよう・教えてあげよう」と考える人がいます。

ゴルフ練習場などで、頼んでいないのに教えに来る人のことを「教え魔」と呼ぶそうです。
“迷惑な人” としてテレビでも紹介されていました。
「相手のためになる」「良かれと思って」との考えで行動しているようです。
これは相手のためではなく自己満足のための行動です。

「利用者ニーズ」を無視した“支援者ニーズの押し付け”と同じものでしょう。
相手が求めていなければ、迷惑行為です。

理解すべきポイント

以下に今回のポイントをまとめました。

①「困る」や「失敗」は機会・経験
生きていれば困る事や失敗する事は誰にでもあり、それも大事な機会・経験です。他者の勝手な考えで奪ってはいけません。

②「助けて」や「教えて」も残存能力
意思を表明することも残存能力の活用です。自己選択・自己決定の尊重でもあります。助けを得ずに自力で解決したいと考えているのかもしれません。

③ 本人の実感が大切
支援者には介助をしたくなることでも、本人にとっては困りごとでも何でもないという事があります。
理解不足の支援者ほど助言を含め、不要な介助を増やします。

〈不要な介助を増やす支援者の特徴〉
 ・声かけ時の距離が近い
 ・声が大きい
 ・よく触る
ご利用者を「出来ない人」「わからない人」と評価しているためでしょう。

しば
しば

支援者から見ると”不適切”あるいは、”ムダ”と感じる事をご利用者がされていた場合、つい口出し・手出しをしたくなるものです。

“誰の生活” で、“誰が決定すべきなのか” を理解していれば、「気が利く」と言われるような支援者ニーズの押し付けはしないはずです。

柔軟な思考と広い視野を意識することをおすすめします。