以前、質問・相談が多いことから「介護過程・アセスメント」をテーマに記事を書きました。
今回の「コミュニケーション技術」も、同様に質問・相談が多い科目です。
介護過程を確認したい方はこちら
私自身とても苦手であり、私生活では人と関わることを避けて暮らしています。
その私が、対人援助や講師の仕事をしており、仕事においては”得意”と自負しています。
苦手なのに”得意”とは、どういうことか?
この記事で紹介していますが、私はモノマネでコミュニケーション技術の向上を図りました。今は、苦手と言うと疑われます。
モノマネで技術が向上するのか?
疑わしく受け止められるかもしれませんが、くわしくは後半に書いています。
今回は「コミュニケーション技術」について、理解すべきことや技術向上のポイントをまとめます。
コミュニケーションとは?
※この項目は、コミュニケーションの学習でよく見る説明と同じような内容です。既に勉強済の方は<2.>から読んでも理解できます。
コミュニケーションの意味を調べると、語源はラテン語で「コムニス=共通の」や「コミュニカーレ=共有する」と説明されています。
ここでは、「コミュニケーション=共有」と捉えることとします。
共有ということは一人では成立せず、自分のほかに別の存在を要します。
メールであれば、”発信”するだけでは成立せず、”受信”されることでコミュニケーションが成立します。
※受信されれば成立するという説明では誤解を招きますが、この項目ではこのくらいに抑えます。
コミュニケーションについて理解すべきポイント
前項で「コミュニケーション=共有」であり、“発信”と“受信”であると書きました。
発信側と受信側、それぞれに理解すべきポイントがあり、以下の(1.)(2.)にまとめました。
(1.)コミュニケーション 発信側のポイント
コミュニケーションにおいて、こんな経験はないでしょうか?
● 意図したように伝わらない
→ 褒めたのに、怒られた。
● 言っていないのに本音が伝わってしまった
→ 喜んでいるのに、「うれしくなさそう」と言われた。
なぜこのようなことが起こるのか?
授業での説明例を用いて解説します。
例えば、
ごはんを食べて「おいしい」というメッセージを表出します。これを他者が受け取ることでコミュニケーションが成立します。
では、「おいしい」と発信した人はどのような感情でしょうか?
① うれしい(肯定的な感情)
② わからない
③ 不快(否定的な感情)
授業の際にも上記の質問をしています。
具体的には以下のように提示します。
Ⓐパターン
ホワイトボードに「おいしい」を書いて表現。
→この際の回答は①が多いです。
「おいしい」の言語情報は、肯定的な感情を意味するからでしょう。
Ⓑパターン
次に目を閉じてもらい、声で「おいしい」と表現します。
→①が減り、②や③の回答が増えます。
Ⓒパターン
最後に私を見てもらい、声に出さず口パクの状態で表現します。
→①がごく少数もしくは0人になり、②よりも③が増えます。
どのクラスでも、最初と最後では逆の感情として受け取られました。
なぜでしょうか?
ⒶⒷⒸがどのような情報なのか確認してみましょう。
Ⓐ 言語情報 = 言葉の意味
Ⓑ 聴覚情報 = 声の高さや速度など
Ⓒ 視覚情報 = 表情や動作など
「Ⓐ言葉の意味」、「Ⓑ言い方」、「Ⓒ振る舞い」、それぞれが矛盾している(一致しない)と感じた場合に、どの情報を優先するして受け取るのかという「メラビアンの法則」に当てはまる結果となりました。
「メラビアンの法則」
人の表現・行動が他者へ及ぼす影響について、アメリカの心理学者ウィナーとメラビアンがその割合を実験により表したものです。(割合は下記)
Ⓐ 7% (言語情報)
Ⓑ 38% (非言語情報)
Ⓒ 55% ( 〃 )
この質問のような状況下ではⒶよりもⒷⒸの方が、多く受け手に影響を及ぼしていることが分かります。
※すべてのコミュニケーション場面で、この割合が当てはまるわけではありません。
ちなみに授業の質問Ⓐの場合でも、文字の書き方(書体)が視覚情報であり、それを変えると受け取り方が変化することも説明しています。
メールやSNSの装飾文字や絵文字などが当てはまるでしょう。
また、メールなどで文字だけを発信しても、受信側がそこに感情を付け加えて解釈することもあるため、言語情報だけを発信するということが難しいこともあります。
コミュニケーション場面では、自分の表現が相手にどのように伝わるのか?
これを意識して発信し、相手への伝わり方をコントロールできることが重要なようです。
(2.)コミュニケーション 受信側のポイント
授業の中で、「コミュニケーション」から連想するものをお尋ねすると、「会話」という回答が多く挙げられます。
理由をお尋ねすると、「普段よく使っている手段だから」との回答でした。
多くの方のコミュニケーション手段が会話であるようで、そのほかにはメール、SNS、身振り・手振り、スキンシップ などの回答もありました。
つづいて、以下の質問をし挙手して頂きます。
・アメリカ人とはコミュニケーションが図れますか?
・フランス人は?
・アフリカ人は?
・馬?
・犬?
・猫?
・鳥?
・魚?
・カエル?
・カブトムシ 、ミミズ 、木 、花 、草 、石 、土 、布 、金属 ...
クラス毎に差はありますが、だんだんと挙がっていた手が少なくなります。
手を挙げない理由をお尋ねすると、
「英語ならわかるけど、フランス語はわからない」
「犬や猫は好きだけど、カエルや虫は嫌いだから」
「石や土は声を出さないから」 などが多い回答です。
言語のやり取りが出来なければ、コミュニケーションは成立しないと捉えている人が多いことが分かります。
また、好き嫌いもコミュニケーションの成立を妨げる要因のようです。
では、言語が同じであればコミュニケーションが図れるのか?
日本語同士であっても、受信側が受け取ろうとしていなければコミュニケーションは成立しません。
相手へのイメージや思い込みなどにより、発信されたメッセージを歪めて受信してしまうこともあります。
コミュニケーションの成立には発信の手段だけではなく、受信側の状態・受け取る姿勢も大きく影響します。
(3.)コミュニケーション技術向上のトレーニング方法
『コミュニケーション技術はモノマネで向上が近道』です。
私の場合は、とあるきっかけで『モノマネ』してみようと思いました。
まず ”自分が好感をもてる人” について考えることから始めました。
その後は好感をもてる人を見つけ、「表情」や「言葉遣い」、「仕草」もマネするようになりました。
仕事の時だけコミュニケーション技術を意識しようと思っていましたが、近所の方に会った時なども無意識にその技術を使っていました。
意識せず振る舞えるようになっており、いつの間にか自分の中で定着していったようです。
<練習サイクル>
「尊敬できる人・好感が持てる人を探す」
↓
「観察」
↓
「マネする」
↓
(違和感があればやめる)
↓
「繰り返す」
自分に馴染まず、違和感がある技術はすぐにやめました。
対人援助や講師の仕事では、様々な方とのコミュニケーションを要しますが、仕事においては臆せず堂々と振舞えるようになり、とても大きな効果を得ました。
ただし、人と関わることが苦手であること自体は今も続いているため、私生活では「店員さんを呼べない」、「なんでも “はい” と言うので欲しくない物を買う」などの状況は変わりません。
まとめ
(2.)に記載した内容を補足して、まとめにします。
→「石や土は声を出さないからコミュニケーションが図れない」との回答について。
声を出さないとコミュニケーションが成立しないという事はありません。
木、花、土、石、布、金属
こられと会話するという人がいます。
対象は異なっても、「理解しようとする姿勢で向き合う」という点では同じでした。
同じ言語同士でも、
同じ家に暮らす家族も、学校や職場の人など、
” 理解しようとする姿勢 ”がなければ、コミュニケーションは成立しません。
同様に、発信側の場合には伝えるための工夫や努力が必要です。
” 対人援助職のコミュニケーション技術 ”
悩んだ時には(2.)の内容を意識し、(3.)を実践することから始めてみてはいかがでしょうか。
仕事に限らずコミュニケーションがスムーズではない状況は、とても辛くて苦しいです。
技術向上により楽になることもありますが、どうしようもなければその状況から離脱しましょう。
向き合って克服を目指すか、その状況から離れるかは自己判断です。
「キツイものはキツイ」、「できることしかできない」です。
ちなみに私は、苦しい状況から離脱したことが何度もあります。
Twitterからきましたが、とても面白い記事でした
たしかに、コミュニケーションは理解しようとすることが大前提のように思います。
読んでてハッとしました。
とても勉強になりました。ありがとうございます
ありがとうございます。
ハッとしていただけてうれしいです。